自己免疫性溶血性貧血

(autoimmune hemolytic anemia)AIHA

抗赤血球抗体によって惹起される

疾患概念

 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、赤血球膜上の抗原と反応する自己抗体が産生され、抗原抗体反応の結果、赤血球が傷害を受け、赤血球寿命が短縮し貧血をきたす疾患。自己抗体が赤血球に結合する至適温度により、温式と冷式のAIHAに分類され、冷式には寒冷凝集素症と発作性寒冷ヘモグロビン尿症がある。

疫学

 自己抗体の発生原因の詳細は不明の部分が多い。成人を含めた自己免疫性溶血性貧血の推定患者数は100万対3~10人、年間発症率は100万対1~5人とされる。温式AIHAは成人女性に多く、小児期では思春期以降の女児患者が多い。寒冷凝集素症のうち続発性は小児ないし若年成人に多く、マイコプラズマ感染症後にみられるものが多い。発作性寒冷ヘモグロビン尿症はほぼ小児期に限ってみられ、麻疹・水痘・ムンプス等のウイルス感染に続発する

症状

(1) AIHAに共通するもの
  ①顔色不良や易疲労などの貧血症状 ②黄疸 ③軽度の脾腫 ④胆石症
 (慢性に経過する温式AIHAの場合)⑤血管内溶血発作を来す疾患では発作時に腰背部
  痛・腹痛・発熱・褐色尿
(2) 温式AIHA
  小児例では急激な発症を呈することがある。特発性血小板減少性紫斑病 (ITP)を合併す
  るとEvans症候群と呼ばれる。
(3) 寒冷凝集素症
  臨床症状は溶血によるものと末梢循環障害によるものからなる。感染に続発する場
  合、比較的急激に発症し、ヘモグロビン尿を伴い、貧血の程度も強くなる。マイコ
  プラズマ感染では、発症から2~3週間の回復期に溶血症状をきたす。循環障害症状
  として、四肢末端・鼻尖・耳介のチアノーゼ、感覚異常、レイノー症状等がみられ
  る。
(4) 発作性寒冷ヘモグロビン尿症
  小児でみられるウイルス感染後の発作性寒冷ヘモグロビン尿症は、5歳以下の男児に多
  い。発症は急激で激しい血管内溶血を生じ、腹痛・四肢痛・悪寒戦慄・ショックなど
  をきたしたり、急性腎不全を合併することもある

治療

 温式AIHAでは、副腎皮質ステロイドホルモンが第1選択薬となり、80%以上の症例はステロイド単独で管理できる。第2、第3選択として脾摘術と他の免疫抑制薬が挙げられるが、5歳未満では脾摘術は行いにくい。
 冷式AIHAでは、寒冷への暴露を避ける。ステロイドホルモンの有効性は明らかでない。重症寒冷凝集素症では、交換輸血や血漿交換により寒冷凝集素を除去することも有効である。

予後

 温式AIHAのうち、小児の急性発症型はしばしば6ヶ月までに改善する急性の経過をとる。年長児の温式抗体によるAIHAでは、年余にわたる治療が必要となることも多い。冷式抗体によるAIHAでは、発症時の症状が激しい場合があるが、多くは急性の経過で改善する。寒冷凝集素症の場合2~3週間程度、感染後の発作性寒冷ヘモグロビン尿症の場合数日ないし数週で溶血が収束する.。

1.常温型自己免疫性溶血性貧血
2.寒冷凝集素症(cold hemagglutinin disease)CHD
3.発作性寒冷血色素尿症(paroxysmal cold hemoglobinuria)PCH

● 頻度的には1,2,3の順
● それぞれ、出現する抗体に差がある
● 特発性と続発性のものがあり、一般的に特発性の頻度が高い。
● AIHAにおける輸血副作用は血管外溶血の遅発性溶血性副作用である。
● AIHA患者では、E抗原陰性の患者にE抗原陽性の血球を入れると同種抗体を産生
 しやすいといわれているので、輸血用製剤はABO型と共にRh系の血液型も同型の
 ものを用いる。
● 補体活性がある(C3d+)場合は、血漿成分の輸血を控え、血球は洗浄血球を用いる。
● 副腎皮質ホルモンの投与も考慮する。

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