DIC(播種性血管内凝固症候群)

● 播種性血管内凝固症候群(DIC)は通常,急速に進行し,出血および微小血管閉塞を
 引き起こして臓器不全に至る。
● 血液凝固系の活性化に伴い,線溶経路も活性化する。
● DICはときに緩徐に進行することがあり,出血ではなく血栓塞栓現象も引き起こす。
● 重度で急速進行性のDICでは,重度の血小板減少症,PTおよびPTTの延長,急速に減少
 する血漿フィブリノーゲン濃度,および高濃度の血漿Dダイマーを示す。
● 原因の即時是正が優先される。
● 重度の出血では,血小板濃厚液,クリオプレシピテート,および新鮮凍結血漿による
 補充療法が必要になることもある。
● 緩徐進行性のDICでは,ヘパリンが有用であるが,急性発症のDICで有用になることは
 まれである(主に死亡胎児遺残を認める女性でのみ使用する)。

敗血症病態における凝固線溶異常とDIC

敗血症によるDIC

参考

血栓・免疫、その制御

線溶能によるDIC病型分類

線溶能によるDIC病型分類

DIC診断基準

スクリーンショット 2020-06-18 14

病因

播種性血管内凝固症候群は通常,組織因子が血液に曝露され,凝固カスケードが開始することにより発生する。さらに,DICにより線溶経路が活性化する( 線溶経路)。サイトカインおよび微小血管の乱流により内皮細胞が刺激されることで,内皮細胞から組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)が分泌される。tPAおよびプラスミノーゲンの両方がフィブリンポリマーに結合し,プラスミン(tPAのプラスミノーゲン分解により産生される)によってフィブリンがDダイマーおよびその他のフィブリン分解産物に分解される。そのため,DICは血栓症および出血の両方を引き起こす。

以下の臨床状況でDICが最も頻繁に生じる:

● 産科合併症(例,常位胎盤早期剥離,生理食塩水で誘発した治療的流産、死亡胎児
 もしくは妊娠産物の遺残,羊水塞栓症):組織因子活性を有する胎盤組織が母体循環に
 入るか、母体循環に曝露する
● 感染、特にグラム陰性菌によるもの:グラム陰性菌の内毒素は食細胞、内皮細胞、
 および組織細胞に組織因子活性の発生または曝露をもたらす
● 癌、特にムチン分泌性の膵臓の腺癌、前立腺の腺癌、および急性前骨髄球性白血病:
 腫瘍細胞が組織因子を発現または分泌する。
● 虚血性の組織損傷および組織因子の放出を引き起こす状態に起因するショック。

病態

緩徐進行性のDICでは、主として静脈の血栓塞栓性疾患(例:深部静脈血栓症、肺塞栓症)を引き起こすが、ときに心臓弁疣贅がみられることがある。
異常出血はまれである。

重度で急速進行性のDICでは、対照的に血小板減少症に加えて血漿凝固因子およびフィブリノーゲンの欠乏を引き起こし、それにより出血を来す。微小血管血栓症を伴う臓器内出血では、多臓器機能障害および多臓器不全を引き起こすことがある。線溶によるフィブリンポリマーの溶解が遅延すると、赤血球の機械的な破砕、破砕赤血球の産生,および軽度の血管内溶血を来すことがある。

症状・徴候 

緩徐進行性のDICでは、静脈血栓症の症状および、または肺塞栓症の症状がみられる場合がある。

重度で急速進行性のDICでは、皮膚穿刺部位(例:静注または動脈穿刺)の持続的出血、薬剤注射部位での斑状出血形成、および重篤な消化管出血が生じることがある。

診断

DICにおける凝固・線溶系マーカー

● 原因不明の出血または静脈血栓塞栓症が認められる患者では(特に素因となる疾患が
 存在する場合)、播種性血管内凝固症候群を疑う。
● DICが疑われる場合は、血小板数、PT、PTT、血漿フィブリノーゲン濃度、および
 血漿Dダイマー(in vivoのフィブリン沈着および分解の指標)を検査する。
● 緩徐進行性のDICでは、軽度の血小板減少症、正常または軽微なPT(検査結果は
 典型的にINRで報告される)およびPTTの延長、正常または中等度のフィブリノーゲン
 濃度の低下、および血漿Dダイマー濃度の上昇が認められる。
● 様々な疾患により急性期反応物質としてのフィブリノーゲンの産生亢進が刺激される
 ため、2回連続の測定でフィブリノーゲン濃度が低下していることがDICの診断に役立
 つことがある。
● 緩徐進行性のDICでは、おそらく血漿中に活性化した凝固因子が存在するために、
 実際には初期のPTT値が正常値よりも短くなることがある。
● 重度で急速進行性のDICでは、より重度の血小板減少症、より延長したPTおよび
 aPTT、急速に減少する血漿フィブリノーゲン濃度、および高濃度の血漿Dダイマーを
 示す。
● 凝固検査で類似の異常を引き起こす可能性のある広範な肝壊死から重度で急性のDIC
 を鑑別しなければならない場合は、ときに第VIII因子の値が有用なことがある。
 第VIII因子は肝臓の内皮細胞で産生され、肝細胞の破壊時に放出されるため、肝壊死
 では第VIII因子の濃度が上昇する。
 トロンビンにより活性型第VIII因子をタンパク分解する活性化プロテインCの産生が
 誘導されるため、DICでは第VIII因子が減少する。

治療

場合によって補充療法(例:血小板、クリオプレシピテート、新鮮凍結血漿)
ときにヘパリン
原因の即時是正が優先される(例,グラム陰性菌敗血症が疑われる場合の広域抗菌薬療法、常位胎盤早期剥離における子宮内容除去術)。治療が奏効すれば、播種性血管内凝固症候群はすぐに回復するはずである。

重度の出血の場合

出血が重度の場合もしくは重要な部位(例:脳、消化管)に生じている場合、または緊急に手術が必要な場合は、補助的な補充療法が適応となる。

補充療法は以下から成る:
● 血小板減少症を改善するために濃厚血小板を輸血
(血小板数が急速に減少しているか10,000~20,000/μL未満の場合)
● フィブリノーゲンの値が急速に減少しているか100mg/dL未満の場合に、クリオ
 プレシピテートによるフィブリノーゲン(および第VIII因子)の補充
● その他の凝固因子および生来の抗凝固因子(アンチトロンビン,プロテインC,
 S,およびZ)の濃度を上げるために新鮮凍結血漿の輸血
● 重度で急速進行性のDICにおけるアンチトロンビンの濃縮製剤投与の有効性について
 は未解決である。
● 低血圧が存在する場合は大量輸液がDICの進行を止めるために不可欠である。

緩徐進行性のDIC

● 静脈血栓症または肺塞栓症を伴う緩徐進行性の播種性血管内凝固症候群に対する
 治療には、ヘパリンが有用である。
● 出血または出血リスクのある急速進行性のDICでは、通常ヘパリンは適応となら
 ないが、例外は、胎児遺残がある女性で、進行性のDICのために血小板、フィブリ
 ノーゲン、および凝固因子の減少が進行している場合である。このような患者では、
 DICをコントロールし、フィブリノーゲンおよび血小板の値を増加させ、凝固因子の
 過度の消費を減らすため、数日間ヘパリンを投与する。
 その後、ヘパリンを中止し、子宮内容を除去する。

①DIC基礎疾患の治療

原因となる基礎疾患の治療が極めて重要。しかし、基礎疾患の除去は容易でなく、しかも時間のかかる場合が多く、実際には抗凝固療法などによりDICをコントロールしつつ基礎疾患の治療を行うことが必要になる。

②抗凝固療法

DICでは、基礎疾患により引き起こされた過凝固状態を制御するために抗凝固療法が必要。一般的薬剤として、アンチトロンビン(AT)と結合してATの抗トロンビン作用を著しく促進するヘパリンがある。

● ヘパリンには出血症状を助長する副作用があり、その軽減を目的に開発された低分子量
 ヘパリン(フラグミン)、あるいは生体内細胞外マトリックス成分のひとつであるヘパ
 ラン硫酸を主成分とするヘパリノイド製剤(オルガラン)や血管内皮に存在するトロン
 ボモジュリンの遺伝子組換え型製剤(リコモジュリン)が使われている。
● セリンプロテアーゼであるトロンビンなどの活性化凝固因子の阻害作用をもつメシル
 酸ガベキサート(エフオーワイ)とメシル酸ナファモスタット(フサン)もDICの
 治療薬として使われる。
 ヘパリンに比べて抗凝固活性は弱いものの、高サイトカイン血症を伴う敗血症による
 DICの病態には有効性が期待できる。

③補充療法

DICの消費性凝固障害のために出血傾向が顕著な時には、抗凝固療法を十分に行いつつ、濃厚血小板(PC)、新鮮凍結血漿(FFP)、あるいは濃縮AT製剤(アンスロビンPまたはノイアート)などを適宜投与して血液成分補充を行う必要がある。
治療では、誘因となる基礎疾患の治療、ヘパリンの使用による血液凝固阻止、新鮮血・血小板の輸血、フィブリノゲンの静注などを行う。最近は遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤(リコモジュリン)も抗凝固活性を発揮するDIC治療薬として利用できる。

● 一般に生理的に存在するトロンボモジュリンの凝固阻止作用には以下のステップある。
 ①トロンボモジュリンはトロンビンを捕捉することで、抗凝固活性を発揮。
 ②トロンボモジュリンに捕捉されたトロンビンは、向凝固活性(フィブリノゲンを
  フィブリンに転換する作用や血小板活性化作用などの)を失う。
 ③さらに、このトロンビン-トロンボモジュリン複合体はプロテインC(Protein C:
  PC)を活性化。
 ④活性型プロテインC(Activated protein C:APC)は活性型第V因子(Va)や
  活性型第VIII因子(VIIIa)を不活化し凝固を抑制する。
● 遺伝子組換え薬であるリコモジュリンには究極の血栓症ともいえるDICの治療薬として
 の期待が集まっている。



凝固・線溶系検査にもどる
血液検査にもどる
FDP定量にリンク