止血の成り立ち

1.一次止血の機序

 外傷などにより血管が破綻して出血が起こると血管内皮細胞の下にある膠原繊維が露出し、そこに速やかに血小板が粘着する。これをきっかけとして活性化した血小板から生理活性物質が放出され、これにより血小板同士が凝集して血小板血栓が形成される。ここまでの機構を一次止血という。

2.二次止血の機序

 一次止血を補強するように凝固系が作用してフィブリンを形成するまでを二次止血という。それには内因系凝固と外因系凝固がある。最終的には線溶系という過程をたどる。

内因系凝固

 血管内に存在する因子によっておこる凝固反応である。

  • 機序
    ・血管が損傷して出血が起こると、血液中の第XII因子が血管の内皮細胞下にある膠原繊維に接触して活性化(XIIa)がおこる。
    ・ 活性化されたXIIaはXI因子を加水分解し活性化(XIa)する。
    ・ このXIaはIX因子を加水分解し活性化(IXa)する。この反応にはカルシウムイオン(Ca2+)が必要。
    ・ IXaは第VIII因子、リン脂質、Ca2+とともに第X因子を加水分解して活性化(Xa)する。
    ・ Xaは第V因子、リン脂質、Ca2+とともに第II因子(プロトロンビン)に働いて活性化しトロンビン(IIa)となる。
    ・ トロンビンは血漿中に大量に存在するフィブリノゲンに作用して不安定フィブリンを生成する。
    ・ 不安定フィブリンは活性化されたXIIIaによって安定化フィブリンとなる。
    ・ このフィブリンは不溶性のタンパクで線維状に析出して凝血塊を形成する。

外因系凝固

 血管外に存在する組織トロンボプラスチンに由来する凝固反応である。

  • 機序 
    ・血管が損傷して出血が起こると、血管外の組織液中の組織トロンボプラスチンが血液中に入り、第VII因子と結合して活性化(VIIa)する。
    ・VIIaはCa2+の存在下で直接、第X因子を活性化する。その後は内因凝固系と同様にフィブリンの形成に至る。

線溶系

 血液凝固の結果として出現したフィブリン塊は線溶系のプラスミンにより分解される運命にあり、このプラスミンはフィブリン以外にフィブリノゲンをも分解する働きをもつ。フィブリノゲンがプラスミンにより分解された場合を一時線溶、フィブリンがプラスミンにより分解された場合を二次線溶という。

血液の凝固作用と制御の仕組み

 止血は、まず血管の破れを血小板がふさぎ、一次止血が完了します。次に、組織因子をはじめとした凝固因子が次々に反応して、フィブリンの網の膜が血小板血栓を覆い、フィブリン血栓ができます(二次止血)。この二次止血は、主に血管内の二種類の反応系で制御されています。
一つは、アンチトロンビン(AT)による過剰な反応の制御で、もう一つの反応系はトロンボモジュリン(TM)とプロテインC(PC)の制御系です(図 凝固作用と制御)。これらの制御系は、①凝固が血管の破れたところにだけ起こるようにする働きと、②血栓が不必要に出来すぎないようにする大事な役目を担っています。
アンチトロンビンは、凝固の連鎖反応(カスケード)の中で生じる、トロンビン(活性化第Ⅱ因子、Ⅱa)、活性化第Ⅹ因子(Ⅹa)、活性化第Ⅸ因子(Ⅸa)などと結合して、これらの働きを停止させます。そのため凝固反応の最終段階であるトロンビンの量が減少して、フィブリノゲンがフィブリンに変換できなくなり、フィブリン膜が生成されなくなります。
トロンボモジュリンとプロテインCによる凝固の制御系は、比較的近年発見されました。凝固反応が進む中で作られるトロンビンは、血管の内皮細胞から血管内に突き出た膜タンパク質トロンボモジュリンによって捕まります。トロンボモジュリンとトロンビンが結合した複合体は、次に血液中を流れているプロテインCというタンパク質と接触して、このタンパク質を活性化プロテインC(aPC)に変えます。活性化プロテインCは凝固反応で生じた活性化第Ⅷ因子(Ⅷa)と活性化第Ⅴ因子(Ⅴa)を分解します。凝固反応の中間段階の反応物質(ⅧaとⅤa)が減少していきますので、最終産物であるフィブリンが形成されず、フィブリン血栓形成に終止符が打たれます。
なお、血栓の出来すぎを防ぐための治療薬としては、アンチトロンビンⅢ製剤が最も早く開発され(1987年)、次に活性化プロテインC製剤が2000年に日本で認可されています(「血漿分画製剤のあゆみ」参照)。また、遺伝子組換え型トロンボモジュリンが2008年に承認を受けています。


出血性疾患の診断アプローチ


血栓形成と細胞機能に及ぼす凝固因子の作用機序


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