TDM(Therapeutic Drug Monitoring)

 治療薬物濃度モニタリングTDMは、薬物の標的臓器内濃度の代用として血中濃度を測定し、その結果に基づき投与量を決定することにより、有効な治療効果と副作用の回避を目的としている。
TDMの成立必要条件には、
1) 体内濃度の個体間差が大きい
2) 血中濃度と臨床効果に関連性がある
3) 治療血中濃度域が狭い
4) 薬理効果の有効な手段がない、などがあげられる。

臓器移植領域においても免疫抑制剤のTDMは、ここ20年の間に著しい変貌を示した。 1970年代のプレドニゾロンとアザチオプリンを主体とした臓器移植免疫抑制療法においては、TDMは必要とされなかった。しかし1980年代の初頭に出現した現在の臓器移植成績の向上の先駆けとなったシクロスポリンの導入とともに、免疫抑制剤のTDMが始まった。その後もシクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤、タクロリムス、そしてミコフェノール酸モフェチル(MMF)などの新たな免疫抑制剤の出現は、作用機序の異なる薬剤の組み合わせによる免疫学的相乗効果や副作用の軽減を目的とした多剤併用療法を可能とし、さらにTDMの重要性が増してきた。
特にシクロスポリンやタクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤(CNI)は、その狭い治療濃度域と個体間のみならず、個体内での生物学的利用能(bioavailability)の大きなバラツキから、いわゆる投与量決定困難薬剤(critical-dose drag)としてTDMの必要性が提唱されている。経口投与後のbioavailabilityの変動は、肝臓のみならず腸管上皮にも存在するCYP3Aアイソザイム系(CYA3A4、CYP3A5)の迅速な代謝によるものである。それらを基質とする薬物間での薬物相互作用が多く認められている。さらに、消化管粘膜に存在するP糖蛋白は、薬物を管腔側に排出し、薬物の吸収を制御し、bioavailabilityに関与している。また、従来はアザチオプリンなどの代謝拮抗剤はTDMを必要としないとされてきたが、近年新たに出現した代謝拮抗剤、特にMMFにおいては、個体間のbioavailabilityの変動が大きいことや併用薬剤であるカルシニューリン阻害剤との薬剤相互作用が報告されており、TDMの必要性が提唱されている。



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