HLA抗原

 HLA抗原 human leukocyte antigenは、ヒト第6染色体短腕上存在する、主要組織適合性複合体major histocompatibility complex (MHC)遺伝子領域によりコードされ、MHC領域はクラスⅠ、Ⅱ、Ⅲに分類されている。

● クラスⅠ抗原;クラスⅠ遺伝子のHLA-A、B、C、E、F、Gの6座によってコー
        ドされ、クラスⅠa抗原(HLA-A、B、C)、クラスⅠb抗原
        (HLA-E、F、G)に分けられる。
●クラスⅡ抗原;クラスⅡ抗原のHLA-DR、DQ、DP抗原はクラスⅡ遺伝子領域の
        HLA-DR、DQ、DPの3座によってコードされる。

HLAの細胞分布 

・クラスⅠ抗原;ヒトでは、ほとんどの有核細胞に表現される。
 (中枢神経系のニューロン、角膜上皮膵外分泌細胞には抗原活性がみられていない。
 HLA-G抗原は母体と胎児の接点である胎盤トロホブラストに特異的に発現されて
 いる。胎盤トロホブラストには他のクラスⅠ、Ⅱ抗原は発現していない)
・クラスⅡ抗原;Bリンパ球、活性化Tリンパ球、単球などの限られた細胞に表現され
 る。

HLA詳細

HLA抗原の検出

1)血清学的方法;LCT(lymphocyte cytotoxicitytest)リンパ球細胞毒試験
   対象抗原:HLAクラスⅠ抗原のHLA-A、B、C抗原、
        HLAクラスⅡ抗原のHLA-DR、DQ抗原

2)細胞学的方法;
 ・ MLC(mixed lympphocyte culturetest)リンパ球混合培養試験
    対象抗原:HLA-D抗原
 ・ 二次刺激MLC反応によるPLT(primed lymphocyte typing)
    対象抗原:HLA-DP抗原
 ・ HLAクラスⅠ抗原では、CTL(cytotoxic T lymphocyte)細胞傷害性Tリンパ
   球クローンがHLAクラスⅠ抗原の微妙な差異を認識出きることを利用した細胞性
   リンパ球融解反応(CML;cell-mediated lympholysis)などが研究に利用されて
   いる。

3)免疫生化学的方法;HLA抗原分子の多彩な等電点の違いを利用して、蛋白質レベル
 で検出する方法

4)DNAタイピング検査法;特定の遺伝子領域を指数関数的に増幅するPCRを用いて
 タイピングする。
● PCR法 1.熱変性 93~96℃の高温で2本鎖DNAを1本鎖にする
      2.アニ-リング温度を急速に40~55℃に下げると、プライマーが鋳型
        1本鎖DNAにハイブリッド結合する。
      3.伸張反応 72℃で数分反応させるとプライマー部位からDNA相補鎖
        が合成されていく。
● タイピング法 (1)PCR-SSP
        (2)PCR-SSOP
        (3)PCR-RFLP
        (4)PCR-SSCP

HLA抗体の検出

 血小板を頻回に繰り返し輸血すると、患者体内に抗HLA抗体が産生され、血小板輸血の効果が著しく低下する、いわゆる血小板輸血不応状態(PTR)となる。また抗HLA抗体は発熱、頭痛、悪心などの非溶血性輸血反応の原因ともなる。

HLA抗体検査、交差試験

 供血者のリンパ球(HLA抗体スクリーニングの場合はHLAタイプ既知パネルリンパ球を選択して12~24種使用)と患者血清との反応を、LCTまたはAHG-LCT(抗ヒト免疫グロブリンLCT anti-human immunoglobulin - LCT)でみる。

 注)LCTは補体を用いた血清反応であるため、補体非結合性あるいは補体結合性
 IgG抗体であっても弱いHLA抗体で細胞表面の抗原分布状態により抗原に結合した
 抗体によって補体が活性化されない場合は、抗体を検出することは不可能。
● HLA抗体を検出できる最も信頼できる方法は、クームス法の原理を用いたAHG-
 LCTである。



白血球血小板抗体についてにもどる

輸血にもどる