即時型不適合輸血が疑われる場合の対処
【最初の処置】
1.輸血を中止
2.エラスタ針は残したまま接続部で輸液セットを新しいセットに交換
3.乳酸リンゲル液をつなぎ、高速で点滴
4.導尿
5.10mlヘパリン採血を行い、血液型を再検
【治療】
1)腎不全への対処
即時的対応、乏尿期の対応、利尿期の対応の3段階に分かれる。
①即時的対応:
早期であれば乳酸リンゲル液3Lを2時間程度で急速投与して利尿を図る。血管内
溶血の存在が明らかになった場合には直ちに、腎血流を 維持するための処置を行う。
a)循環血液量の是正
b)ドパミンの投与(3~5μg/kg/min )
c)利尿剤の投与(Frusemide 250mgを4時間以上かけてDIV )1ml/kg/hr
以上の尿量を確保する。
②乏尿期の対応:
A)集中治療室をもたない病院での対応
1)肺水腫の予防:水制限 尿量+不感蒸泄量(約500ml/day)
2)高カリウム血症の予防:
1.24時間心電図モニター
2.血清カリウム値測定(4時間ごと)6mEq/Lを超えれば直ちにGIK療法開始
(糖液は50%を用いる)
3.不整脈が見られる場合、緊急の対応として10%塩化カルシウム10~20mlをⅣ
4.糖液中心の高カロリー輸液を行う。
(catabolismによる組織細胞からのカリウム排泄増加の予防)
5.代謝性アシドーシスの補正として、重炭酸ナトリウムの投与はできるだけ避け
る。(ナトリウム過剰負荷や、炭酸ガスの過剰産生を起こさないため)
6.BUN、Creatinineは毎日測定する。
7.腎臓内科医のコンサルトを依頼する。
◆血液透析の適応
1.高カリウム血症 7mEq/L を超える場合
2.人工呼吸を必要とする肺水腫
3.一日のBUN上昇が30~50mg/dlを超える時、または、一日のCeatinine の
上昇が0.7~1.5mmol/Lを超えるとき。
あるいは動脈血ガス分析で重炭酸値が12mmol/L以下のとき。
4.尿毒症による意識障害
B)集中治療室を持つ病院での対応
即時型不適合輸血と判断されれば、直ちに集中治療室に収容、乏尿と判断されれば
持続血液濾過透析(CVVHD)を行い、腎機能が十分に回復するまで厳重な体液管理
を行う。
③利尿期の対応:
水分のみならず、電解質も補充する。尿中排泄電解質量を毎日測定して輸液メニューを
作成する。
食事中の蛋白質はBUNが20mg/dL以下になるまで制限する。
2)DICへの対処
出血傾向の抑制
1.血漿・血小板を投与し、凝固系を補正し、循環血液量を維持する。
2.赤血球輸血は適合であることが確認できるまで行わない。
3.どうしても必要な場合、O型血を輸血する。
※ 薬剤によるDICコントロールには確立された治療法はない。明らかな出血傾向に対し
て、文献的にはヘパリン5000単位Ⅳ、以後1500単位/時で6~24時間持続投与
(DIV) → ATⅢが70%以上であること
しかし、ヘパリンは分娩後出血のように出血創面が大きな場合は、出血傾向を助長
させるおそれがある。
※ リコンビナントのトロンボモジュリン(リコモジュリン)が優れていると言われて
いる。
※ AT-Ⅲ製剤投与、FOY1000~2000mg/日、血漿交換・交換輸血等が実施される
が、効果と費用の面で問題がある。
いずれにしても、死亡原因となる出血、肺水腫、高カリウム血症、腎不全に対して対症的に適切な処置を行い、腎機能が回復するまでの間、生命維持を行えば長くとも3週間で回復する。
※ 以下の薬剤も使用されるが高価で治療効果が明らかでない。
ステロイド大量投与
ハプトグロビン:血管内溶血の是正
* FOY:プロテアーゼ・インヒピター投与
* AT-Ⅲ:トロンビンの作用を抑制(ヘパリンの存在下で作用は1000倍にもなる)
* リコモジュリン:トロンビンの凝固酵素活性を抗凝固へと変換、
プロテインCを強く活性化して、プロテインSとともに活性型Ⅴ因子・Ⅷ因子、
PAI(プラスミノーゲン・アクチベータインヒビター)を失活させる
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