間接ク-ムス

ク-ムス法 ; 間接抗グロブリン法
 血清中のIgG抗体を赤血球に感作させてから、ク-ムス血清(抗ヒトγグロブリン+抗補体血清)を反応させる方法。試薬は通常、補体結合の抗体検出感度を高めるために、抗ヒトグロブリン抗体(多特異性抗体)を用いる。補体が抗原抗体複合体に完全に作用したとき溶血をおこす。(抗Tja、一部の抗A、抗B)

間接抗グロブリン試験の応用 

1.輸血を行うときの交差試験
2.血液型不適合妊娠による新生児溶血性疾患が疑われるとき
3.自己免疫性溶血性貧血患者の診断と治療効果の判定
4.不完全抗体の型特異性の同定(パネル血球にて)

方法

①スクリーニング赤血球と自己対照の本数の試験官を用意しラベリングする。(注1)
②各試験管に患者血清(血漿)を2滴ずつ滴下する。
③スクリーニング赤血球と患者(自己)赤血球浮遊液をそれぞれの試験管に1滴滴下
 する。
④試験管の中味をよく混ぜてから。反応増強剤(ウシアルブミン液、PEG、LISS)
 を各試験管に2滴加えて、再度よく混和後37℃で10~30分間加温する
 (注2,3)
⑤生理食塩液にて3回以上洗浄する(注4)
⑥洗浄した各試験管の赤血球沈層に1~2滴ずつ抗ヒトグロブリン抗体を加える
⑦よく混ぜてから、各試験管を900~1000G(3400rpm)/15秒遠心する
⑧赤血球沈殿塊を優しく穏やかにほぐしながら凝集の有無を観察する
⑨間接抗グロブリン試験の結果を記録する
⑩陰性結果の試験管には、IgG感作赤血球を加えてよく混和後900~1000G
 (3400rpm)/15秒遠心する。赤血球が凝集すれば、操作手順および試薬が
 適正であったことを示す(注5)

【注釈】
注1)スクリーニング赤血球には、Dia抗原が組み込まれていなければならない。
注2)滴下数は試薬の説明書に従う。
注3)用いる反応増強液により加温時間が異なるので説明書に従う。PEGの場合、
   用いる抗ヒトグロブリン抗体は抗IgGが望ましい。
注4)洗浄後は生理食塩液をよく除く。
注5)クームスコントロールが凝集しない場合は再検査する。

● 生食法判定の検体に,重合ウシアルブミン、22%ウシアルブミン、LISS、PEG
 等を2~4滴加え、37℃にて10~15分間反応の後、生理食塩水で3回洗浄し、
 抗ヒトグロブリン抗体を2滴づつ加え、遠心後凝集・溶血を判定。
● 重合ウシアルブミン、22%ウシアルブミン、LISS、PEG法に引き続いて行う。
● 陰性の時はIgG感作血球を加え、(2+)~(3+)の凝集を確認。
 (百倍希釈した抗D血清を陽性コントロールとして使用すると精度管理ができる)
● 一部のIgG抗体(抗JKa、抗JKb、抗Leaなど)は、抗体分子の数十倍の補体
 分子を結合する。
● 洗浄は十分に行う。直接・間接ク-ムス試験では十分な洗浄が必要である。
 赤血球に結合した抗体が解離して損失することを最低限に止めるため洗浄は出来る限り
 短時間に行わなくてはならない。
● 洗浄が終了したら、直ちに抗グロブリン血清(ク-ムス血清)を加える。それを行わな
 いと、赤血球に結合したIgG抗体が赤血球から解離し、浮遊液中にフリ-の状態で残
 る。
 このような非結合蛋白(抗体)は最終段階で加えられる抗グロブリン血清を中和し、
 その作用を阻止する。
● 古い血清や、適切に保管されていない血清は、なるべく使用しない。
● 新鮮な補体の存在下のみで検出される希な抗体がある。ACD、CPD,EDTA、
 のような抗凝固剤は、カルシウムをキレ-トし、補体の活性を抑制する。このような
 血漿を使用すると血清に比べて偽陰性反応を起こす原因となることが多い。
● 再遠沈は行わない(弱い反応は陰性化してしまう)。
● 指栓は、汗等の型物質やその他蛋白等の汚染によるマスキングで反応が偽陰性になる
 可能性があるので、絶対行わない。

解釈

1.凝集または溶血反応が見られる場合はIgG抗体が存在する。抗D、抗C、抗c、
 抗E、抗e、抗Lea、抗Fya、抗Jka、抗Dia、抗Dib、抗S、抗s、
 抗Jra、抗Xga、抗PP1Pk(Tja)など
2.自己対照に凝集がみられ、直接抗グロブリン試験が陽性の場合は精査を行う。
 ・ 患者の年齢、診断名、使用薬剤、輸血歴、妊娠歴の確認
 ・ EDTA加採血を行い、精査を行う(EDTAは試験管内での補体活性化を阻止する
   ため、陽性の場合は抗体や補体が生体内で感作していることを意味する)。
 ・ 抗ヒトIgG、抗補体などを用い、IgG感作、あるいは補体感作を鑑別する。
 ・ IgG抗体感作であれば、抗体解離試験を行い抗体同定を行う。

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