血管内溶血性副作用

 輸血された赤血球が血管内で直ちに溶血し、激しい症状をきたす重篤な溶血性輸血副
作用。
ほとんどは、ABO不適合輸血(異型輸血)時の抗A、抗B抗体が原因。

● ABO不適合輸血
抗赤血球抗体が赤血球表面の抗原に付くことにより、補体の活性化が起こり、赤血球膜を破壊して溶血をおこす。
溶血の強さは、補体活性の強さに比例し、IgM抗体が格段に強い。
ABO不適合輸血の死亡率は20%前後で、抗原抗体反応により補体が活性化され、サイトカイン・凝固系の活性化を促し腎血流量の低下、DICから腎不全を起こすと考えられている。

【症状】

 輸血直後より、静脈に沿った熱感、顔面紅潮、腰痛、背痛、胸部絞扼感、呼吸困難を訴える。発熱はまれであるが、蕁麻疹はしばしば見られる。血管攣縮に伴い一時的に血圧上昇をみることがあるが、カリクレイン-キニン系の活性化等による血管透過性の亢進により、循環血液量の減少、ショックを起こすこともある。赤血球崩壊によって放出されたトロンボプラスチンにより、DICを起こし、血栓形成、塞栓を形成して腎血流量の減少から腎不全あるいは呼吸困難を起こす。一方、凝固因子および血小板減少をきたし、出血傾向を示す。腎不全(血圧低下とそれに伴う腎血流量の減少およびDICによる血栓と塞栓が主因)が進行すると乏尿さらには無尿に至る。

● 麻酔中は症状が乏しい。
● 異型輸血の症状は通常5分以内に現れるので、輸血の開始はゆっくりと行い、10
 分間はベッドサイドで観察する。

【検査成績】

 凝固因子、血小板、ATⅢの減少
 FDP、Dダイマ-、フィブリンモノマ-、PICの増加
 ヘモグロビン、LDH、GOTの増加、間接ビリルビンの上昇と黄疸の出現
 BUN、クレアチニンの上昇、K+上昇による心停止

● 溶血により放出された遊離ヘモグロビンは、ハプトグロビンと複合体を形成して肝臓
 で代謝されるが、処理能力を超えた遊離ヘモグロビンは腎糸球体で濾過され、一部は
 近位尿細管で再吸収されるが、溶血が多量となるとヘモグロビン尿が出現する。
 尿の潜血反応は陽性になるが、沈サでは赤血球は認められない。

【ABO型不適合輸血時の処置方法】・・・・・日本輸血学会作成

 下記のような赤血球輸血のメジャー・ミスマッチの場合で、不適合輸血の症状が現れた場合には、後述の処置が必要である。

 患者のABO血液型  ← 輸血した血液バッグのABO型
   O型       ←  A型またはB型またはAB型
   A型       ←  B型またはAB型
   B型       ←  A型またはAB型

 1)直ちに輸血を中止する。
 2)留置針はそのまま残し、接続部で新しい輸液セットに交換して、乳酸リン
   ゲル液を急速に輸液し、血圧維持と利尿につとめる。(通常は2~3L)
 3)バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数)を15分毎にチェックし記録する。
   血圧低下が見られた時はドパミン(3~5μg/kg/min)を投与する。
 4)導尿し、時間尿を測定する。乏尿(時間尿が50ml以下)の場合、利尿剤
   (ラシックス等)を1アンプル静注する。輸液療法、利尿剤投与に反応せず、
   無尿あるいは乏尿となった場合は直ちに集中治療室や腎疾患の専門医による
   血液透析などの治療が必要である。
 5)FDP、フィブリノゲン、プロトロンビン時間、血小板数などを検査して、DIC
   の合併に注意する。
 6)患者から採血し、溶血の程度を調べ、ABO型オモテ・ウラ検査を再検する。輸血
   した血液バックのABO型を確認する。

【治療】

1.少量の輸血で気づいた場合は、輸血を輸液に切り替える。
2.尿量の確保に努め血圧を維持する。
3.交換輸血は異型輸血が大量で輸血後3時間以内の症例であれば考慮する。
  (血漿交換は根拠が無く無効である。)
4.乏尿となってしまったならば、水分過剰、高K血症、代謝性アシドーシスに注意し、
  透析も考慮する。
5.利尿期にはNaの喪失などの電解質異常に注意する。
  あわせて、蛋白質の異化を抑制するために十分なブドウ糖を投与する。



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