5.手術材料検査手順

検体、伝票、ラベルを、セットで受け取る

 
1.組織診断申込書(伝票)と採取ラベルの確認
 1) 伝票と採取ラベルの記載内容のチェック:患者名、ID、臓器名、採取部位
 2) 伝票と採取ラベルの記載内容の照合
   * 記載内容の不備や不一致がみられた場合
  a) すぐには受付しない
  b) 検体提出医に問い合わせ、訂正あるいは確認を求める
  c) 可能な限り、病理側で、朱書で、伝票に補足、修正を行う
  d) 事の重大性に依っては、リスクマネージャーや総括医長に報告し、ヒヤリハット
   報告書の提出を検討する
  e) トラブル記録簿に記載する
  f) 頻発するトラブル内容は、リスクマネージャーが、臨床へフィードバックする

2.検体の確認
 1) 検体と依頼伝票とが同時に提出されることを原則とする
 2) 冷蔵庫にビニール袋中の生標本として提出されているか、容器に固定された状態で
  提出されているか、さらに、明確に患者名が記入されているか、伝票の患者名と
  一致しているか、を確認する
 3) 伝票や採取ラベルの記載内容との照合;数、種類、採取部位、乳癌の体外診断用組織
  * 不一致がみられた場合は、1.-*に準じて対処する
 4) 標本瓶の検体は患者ごとにまとめて整理する
 5) 術中迅速組織診断が行われた症例では、迅速伝票もセットに加える
   * 迅速伝票がない場合、すみやかに、検体提出医に催促する
 6) 固定状態の確認(検体が、所定の固定液に、充分浸されているか否か?)
  * 固定不備の場合
  a) 適切な固定処置を行う
  b) トラブル記録簿に記載する
  c) 頻発するトラブル内容は、リスクマネージャーが、臨床へフィードバックする

3.検体の取り扱い
 1) ゴム・プラスチック手袋等の着用を原則とし、必要に応じマスクを着用
 2) ビニール袋に欠損がないか確認し、あれば新しいビニール袋に入れ換える
   血液等の漏出があれば消毒し、清拭する
 3) 別途の、検査部 感染防止マニュアルを参照する

4.電算受付
  生検材料検査法に準ずる
  * 問題が生じた場合は、1.-*に準じて対処する

5.生標本の写真撮影
 1) 検体提出後、速やかに写真撮影することが望ましい
 2) 検体と病理番号の一致を確認する。病理番号が採番されていない検体は、
  イニシャル(姓が後)と採取日の記入で代替とする
 3) 患者のイニシャルと採取日、もしくは病理番号を、ダイモテープに刻印し、メジャー
  とともに、デジタルカメラで写真を撮る
 4) 検体や病変部の位置関係、病変部の形状がわかるように撮影し、少なくとも、
  全体像と病変部の拡大像は、必ず撮影する
   *不明な際は、担当病理医もしくは提出医に連絡する
 5) 感染症検体はセル板等を撮影台に敷き撮影し、終了後セル板等は感染性廃棄物
  として処理する
 6) 撮影台および使用したピンセット、鋏等は終了後、消毒し清拭する
 7) 血液等が床に落ちないよう留意し、落ちた時は付近を消毒し清拭する
 8) その他、撮影時の感染防止は、別途の感染防止対策マニュアルを参照する
 9) メディア交換は、メディアに血液等が付着しないようゴム手袋等を新品に取り
  替えた後、取り出す写真撮影

6.固定前の資料採取
 細胞診用スタンプ、凍結組織、電顕資料、遺伝子分析 等、特殊資料を採取した場合は、
 その旨を伝票に記載する

7.生標本の固定
 1) 木札に、患者名、提出日、臓器名、病理番号を記入し、糸で、臓器の端に取り
  付け、20 % 緩衝ホルマリンで、一晩以上、固定する
 2) 固定不良を避ける
  *厚みのある大型検体は、1~2 cmのスライスにするか、割を入れて固定する。
   但し、標本を作るべき面やその近傍は、原則として、割を入れない
 3) 固定中の、臓器の変形を避ける
  a) 消化管は、粘膜面を上にし、粘膜と筋層を揃えて伸展し、ピンで板にとめる
  b) 肝臓のスライスは、バットの底面にガーゼないし紙を敷き、その上に重なら
   ないように一層に並べる
  c) 肺は、気管支に、ホルマリンを注入する
 4) 刃物の扱いに注意する
 5) 木札の検体への取付時、針先が自分の方向に向かないようにする
 6) 固定ピンで手指を刺傷しないよう注意し、必要に応じピンセット等を利 用する
 7) コンタミを避ける
   1症例で、複数の検体がある場合、網袋を使い、他の検体と混じらないようにする

8.水洗・固定後の写真撮影
 1) 検体の再確認;伝票や採取ラベルの記載内容との再照合
 * 問題が生じた場合は、1.-*のb)~e)に準じて対処する 
 2) 固定状態の再確認
 * 固定不良の場合は、固定時間延長、ホルマリン加アルコールによる後固定、
  マイクロウエーブ処理、割入れ 等を、適宜行う
 **半固定標本の写真撮影をする際は、生標本時と同じ扱いとする
 3) 固定用ピンの取り外しは、ピンセット利用が望ましい
 4) 切り出し前に、臓器を水洗する
 5) 固定後の写真撮影
  a) 外観の撮影は、3.に準ずる
  b) 切り出し中の、割面の撮影は、病理医の指示に従う
 6) 臓器コピーをとる
  * 原則として、等倍で、臓器の外観や病変の形状がわかるように行う
 7) ホルマリン等、劇物の吸引防止に努める

9.切出し
 1) 依頼伝票の記載内容を理解する
 2) 依頼伝票と検体患者名が同じであることを再確認する
 3) 肉眼所見や切り出しの記録
  a) 病理医と共同して行う
  b) 数、大きさ、形状、色調、重量、位置関係ならびに切り出し部位を、臓器コピーに
   記録する
 4) 1検体ごとに、切り出し用具の清拭を行う(コンタミ防止)
 5)標本となる面の、選択ないし作製
  a) 病理医と共同して行う
  b) 1症例で切り出される各組織片に、標本番号を付ける
  c) 標本番号と、切り出しスケッチの番号を照合する
  d) 薄切予定面を朱墨でマークする
  e) 1症例の、切り出し個数、薄切予定面、特染の有無を、病理医と検査技師の
   間で確認する
  f) 薄切時の組織消失を念頭に入れる
  g) 剃刀の刃の面に留意し、怪我防止に努める
 6) 郭清リンパ節の切り出し
  a) 検査技師が行う
  b) 郭清リンパ節の、No. と数を記録する
  c) 可能な限り、周囲の脂肪織を取り除く
 7) 脱脂の必要な組織片は、アセトン脱脂する
 8) 半固定標本を切り出した後は、使用した器具類およびまな板を消毒し清拭する。

10.以下の作業工程は、生検材料検査法に準ずる
  但し、結果配布は、依頼された臓器写真のみ送付する



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