不規則抗体同定に必要な知識と情報
抗体の同定
不規則抗体スクリーニングにおいて溶血、または凝集反応が認められた場合、抗体の特異性を同定し、 その抗体が輸血に際し臨床的に意義のあるものか、新生児疾患の原因になるものなのか判断しなければ ならない。抗体同定にあたっては、抗体スクリーニングで得られた情報と患者の既往歴、輸血歴、妊娠歴、 投薬などの情報は抗体の特異性を決定するのに重要な手がかりとなる。
【試薬】
・抗体スクリーニングに同じ
・抗体同定用パネル血球 添付されている抗原構造表で抗体の特異性をみる。
抗原によっては、パネル血球すべてが陰性(低頻度抗原)のもの、またはすべてが陽性(高頻度抗原)
のものがある。これらは抗原表に明示されず欄外に記載されている場合もあるので注意する。
【方法】
・抗体スクリーニングで陽性反応を示した方法を中心に行う。
【解釈】
1.抗体の特異性と血清学的性状を知ることによって、溶血性輸血副作用や新生児溶血性疾患の可能性が
推測できる。
2.適合血が事前に確保できると同時に、弱い抗体が存在した場合には高力価の各種市販試薬を用いて
適合血を得ることができる。
3.交差適合試験の方法が選択でき、さらに緊急時における対応ができる。
《抗体の血清学的性状》
1.至適温度(4~37°C)、各メディウムにおける反応の強さ
反応する温度領域が低温であれば冷式抗体を、37°Cであれば温式抗体を考慮する。
メディウムでは生理食塩水液法を中心に反応すれば自然抗体を、間接抗グロブリン試験であれば免
疫抗体を推測する。
2.血球の酵素処理効果MNSs、Duffy、Xg血液型などの抗原は酵素処理により破壊されるため検出で
きない、あるいは減弱し、また逆に酵素処理することによって反応が増強する(Rh、Kidd血液型
など)各メディウムの反応から抗体を推測する。
3.凝集力、凝集塊のくずれ方
他の抗体と比べ高力価でありながら凝集力が弱く、反応を見逃されやすい抗Jra(HTLA抗体) などが
ある。
4.補体存在下での溶血反応(補体結合性)
P(抗P、抗PP1Pk(Tja)抗体)、Lewisなどの血液型抗体は補体結合性があり、溶血反応を示すこと
がある。
間接抗グロブリン試験にて血球量が対照と比べ少ない時は特に注意する。
《抗原の分布と特性》
1.血液型抗原の頻度
比較的よく検出される抗体(血液型)を優先して推測するとともに抗原の頻度を考慮する。
2.赤血球以外にも含まれる血液型抗原 ABO、Lewis、I、P血液型などでは赤血球上に限らず血清中に
可溶性抗原(型物質)として存在する。
型物質による抑制試験などに応用される。
3.抗原活性の低下を示す血液型
MN、P、Lewis、Duffy血液型などでは経時的に抗原性が低下することを考慮するとともに、 使用
する血球は新鮮であることが望まれる。
4.量的効果(dosage effect) Rh系抗体、抗M、抗N、抗Fyb抗S、抗s、抗Jka、抗Xga、抗Jkb、抗体
などではホモ接合血球と強く反応するなど凝集に強弱がみられる。
《抗体の頻度》
1.自然抗体の頻度
自然抗体として検出される頻度から抗体を推測する。
2.免疫抗体の頻度
輸血、妊娠などにより免疫され、検出される頻度から抗体を推測する。
3.自然抗体として比較的多く認められるもの
自然抗体としては抗I抗体(寒冷凝集素)、免疫抗体としてRh系の特異性を示す場合。
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