タクロリムス

検査の目的

 全血中のタクロリムス濃度の測定を目的とする。免疫抑制剤であるタクロリムスは、肝・腎・骨髄移植時の拒絶反応抑制に加え、関節リウマチ、重症筋無力症、ループス腎炎などの自己免疫疾患の治療に用いられる。

検査に用いられる手順の原理及び測定法

測定法:化学発光免疫測定法(CLIA法)
<反応プロトコール:1ステップ25アッセイ、前処理なし>
①検体200μLに除蛋白剤200μLを加え撹拌したのち、遠心分離を行い上清をとる。
②上清40μLに検体希釈液80μLおよびマイクロパーティクル50μLおよびコンジュゲート20μL
 を加え、反応させる。
③未反応物を除去後、プレトリガー100μLを加え、反応させる。
④トリガー300μLを加え、反応生成物の発光(波長約400~500nm)の発光強度を測定する。
⑤同様の操作で得られたキャリブレータの発光強度から、検体中のタクロリムス濃度を求める。

生物学的基準範囲又は臨床判断値

12時間値:5.0~20.0ng/ml

干渉及び交差反応

タクロリムス干渉及び交差反応

臨床的解釈

 全血中のタクロリムスに対する確定した治療域は存在しないため、臨床状態が複雑なこと、免疫抑制剤への感受性やタクロリムスに対する腎毒性の個人差、他の免疫抑制剤の併用、移植の種類、移植後の経過時間、その他の多くの要因により、タクロリムスの有効血中濃度が異なる場合がある。そのため、個々のタクロリムス濃度だけを指標として、各患者の治療計画を変更しないこと、治療計画の変更の前に、臨床的な評価を十分に行うこと、臨床的な評価に基づいて各患者別の有効血中濃度域を決定することが重要である。
治療域は使用する診断キットにより異なるため、各診断キットに対して治療域を決定する必要がある。測定法や代謝物の交差反応性の違いから、異なる測定法で得た測定値の間に互換性はなく、適用できる係数も存在しない。このため、一人の患者に対しては常に同じ測定法を使用しなければならない。
タクロリムスの治療域は明確に定義されていないが、移植後早期では全血中タクロリムス濃度を12時間トラフ値5.0~20.0ng/mLにすることとの報告がある。これを超える濃度では副作用の発生率が高くなる。24時間トラフ値は12時間トラフ値より33~50%低い濃度にする。
トラフ値で30.0ng/ml超えた場合:緊急異常値、異常時報告
中毒症状として嘔吐、浮腫、振戦、痙攣などがみられる。また、連用により腎障害、高血糖などを誘発する。

可能性のある変動要因

 EDTA入りの採血管で採取した測定前の全血検体は、2~8℃で7日間まで保存可能。
7日間以内に測定を行わない検体は、-10℃以下で凍結保存すること。正確な測定結果を得るため、検体は融解後、十分混和すること。


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