シクロスポリン

検査の目的

 全血中のシクロスポリン濃度の測定を目的とする。
免疫抑制剤であるシクロスポリンは、きわめて強い免疫抑制作用を持つため臓器移植、骨髄移植、肝移植などに適用されている。しかし、治療濃度域が狭く、経口投与時の吸収に大きな個体差があり複雑な薬物動態を示す。また、腎障害、肝障害、中枢神経障害といった副作用があるため、シクロスポリンの投与の際には血中濃度を測定して投与量の決定、維持量のモニタリングをする必要がある。

検査に用いられる手順の原理及び測定法

測定法:化学発光免疫測定法(CLIA法)
<反応プロトコール:2ステップ18-4アッセイ、前処理なし>
①検体200μLに溶解剤100μL及び除蛋白剤400μLを加え撹拌したのち、遠心分離を行い上清を
 とる。
②上清75μLに検体希釈液90μLおよびマイクロパーティクル50μLを加え、反応させる。
③未反応物を除去後、コンジュゲート50μLを加え、反応させる。
④未反応物を除去後、プレトリガー100μLを加え、反応させる。
⑤トリガー300μLを加え、反応生成物の発光(波長約400~500nm)の発光強度を測定する。
⑥同様の操作で得られたキャリブレータの発光強度から、検体中のシクロスポリン濃度を求める。

生物学的基準範囲又は臨床判断値

初期濃度:150~250ng/ml
維持濃度:80~120ng/ml

干渉及び交差反応

シクロスポリン干渉及び交差反応

臨床的解釈

 全血中のシクロスポリンに対する確定した治療域は存在しないため、臨床状態が複雑なこと、免疫抑制剤への感受性やシクロスポリンに対する腎毒性の個人差、他の免疫抑制剤の併用、移植の種類、移植後の経過時間、その他の多くの要因により、シクロスポリンの有効血中濃度が異なる場合がある。そのため、個々のシクロスポリン濃度だけを指標として、各患者の治療計画を変更しないこと、治療計画の変更の前に、臨床的な評価を十分に行うこと、臨床的な評価に基づいて各患者別の有効血中濃度域を決定することが重要である。
治療域は使用する診断キットにより異なるため、各診断キットに対して治療域を決定する必要がある。測定法や代謝物の交差反応性の違いから、異なる測定法で得た測定値の間に互換性はなく、適用できる係数も存在しない。このため、一人の患者に対しては常に同じ測定法を使用しなければならない。
トラフ値で500ng/ml超えた場合:緊急異常値、異常時報告
中毒症状として糸球体輸入細動脈の収縮による腎血流量の低下、尿細管機能障害などの腎障害を生じる。その他、肝機能障害、中毒性けいれんなどを誘発する。

可能性のある変動要因

①服薬後の採血時間により濃度が異なるため、服薬時間と採血時間を正確に把握しなけ  
ればならない。
②EDTA入りの採血管で採取した測定前の全血検体は、2~8℃で7日間まで保存可能。
7日間以内に測定を行わない検体は、-10℃以下で凍結保存すること。正確な測定結果を得るため、検体は融解後、十分混和すること。


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