ウィルス

細菌とウイルス:大きさの違い
 ウイルスは細菌の50分の1程度の大きさで、自分の細胞がないので、他の細胞に入り込んで生きている。ウイルスは宿主の遺伝情報の流れ(DNA → RNA → protein)に乗り、或は完全に乗っ取ってその遺伝情報を増幅し、その子孫ウイルス粒子を作る。
RNA と DNA はお互いに対応する塩基配列を持つので、遺伝情報は DNA であっても RNAであっても良い。又、1本鎖であっても、2本鎖であっても持つ情報は変らない。1本鎖の場合、mRNAと同じ極性(プラス鎖)でも、逆の極性(マイナス鎖)であってもよい。これに対応し、ウイルスの方も、1本鎖あるいは2本鎖の RNA あるいはDNA ウイルスがあり、極性もプラス、マイナス両方ある。

ウィルス鎖

ウイルスは以下のような点で、一般的な生物と大きく異なる。
1. 非細胞性で細胞質などは持たない。基本的にはタンパク質と核酸からなる粒子である。
2. 大部分の生物は細胞内部にDNAとRNAの両方の核酸が存在するが、ウイルス粒子内には基本的に
 どちらか片方だけしかない。
3. 他のほとんどの生物の細胞は2nで指数関数的に増殖するのに対し、ウイルスは一段階増殖をする。
 また、ウイルス粒子が見かけ上消えてしまう「暗黒期」が存在する。
4. 代謝系を持たず、自己増殖できない。他生物の細胞に寄生することによってのみ増殖できる。
5. 自分自身でエネルギーを産生せず、宿主細胞の作るそれを利用する。
 なお、4はウイルスだけに見られるものではなく、リケッチアやクラミジア、ファイトプラズマなど
 一部の細菌や真核生物にも同様の特徴を示すものがある。

細胞は生きるのに必要なエネルギーを作る製造ラインを持っているが、ウイルスはその代謝を行っておらず、代謝を宿主細胞に完全に依存し、宿主の中でのみ増殖が可能である。ウイルスに唯一できることは他の生物の遺伝子の中に彼らの遺伝子を入れる事である。厳密には自らを入れる能力も持っておらず、細胞が正常な物質と判別できず、ウイルスのタンパク質を増産するのを利用しているだけである。

◉ 小児まひを起こすポリオウイルス、風邪の症状を起こすアデノウイルスなどはエンベロープを持た
 ない。
◉ エイズウイルス(HIV)、B型やC型肝炎ウイルス、インフルエンザウイルスなどはエンベロープ
 ウイルスである。
エンベロープウイルスはエンベロープが壊されると感染性がなくなるので(感染の第一段階でエンベロープ蛋白が細胞の受容体と結合する事が必要だが、エンベロープが無くなればエンベロープ蛋白も失われる)、リピド2重膜を壊すような物質、例えばクロロホルム、アルコール、中性洗剤、などで感染性を失わせる事が出来る。

ウイルスの感染サイクル


ウイルスの基本構造

ウイルス粒子の構造


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